2022年10月からの社会保険制度の適用範囲拡大および2024年10月からの更なる拡大に向け、企業が準備すべきポイントと注意事項について説明します。
社会保険制度の適用拡大とは
社会保険制度の適用拡大とは、健康保険および厚生年金保険などの社会保険の適用範囲を段階的に広げていく政策を指します。これまで社会保険適用の義務は従業員数が501人以上の企業に課せられていましたが、2022年10月以降は従業員数が101人以上の企業、そして2024年10月以降は従業員数が51人以上の企業にも適用されることとなります。
ただし、ここでの従業員数とは、従業員数そのものではなく、「現在の厚生年金保険の適用対象者」数を意味します。さらに、適用対象者には一定の条件があります。従業員が社会保険の適用対象になるためには、週の所定労働時間が20時間以上、月額賃金が8.8万円以上、2カ月以上の雇用の見込みがある、学生ではない、という4つの条件を満たす必要があります。
したがって、現在101人の従業員を雇用している企業であっても、社会保険の適用対象者が100人以下であれば、適用拡大の対象にはならないことに留意が必要です。また、パートタイマーやアルバイトなどの雇用形態も検討が必要です。
社会保険加入の適用拡大に伴う変更点
社会保険の適用が広がることで、パートタイマーやアルバイトなどの従業員は「健康保険」と「厚生年金保険」に新たに加入することとなります。これにより、これらの従業員の保障が向上する一方で、事業主側には新たな負担が増加します。
社会保険制度の適用拡大に伴う事業主の負担
制度改正に伴って、事業主が負担しなければならないことは、費用、手続き、人材確保の3つの側面から考えられます。
- 費用: パートタイマーやアルバイトが社会保険に加入することで、社会保険料の事業主負担が発生します。負担額はパートタイマーやアルバイトの賃金に応じて異なります。例えば、時給が東京都の最低賃金である時給1,072円(2022年12月時点)の場合、月額8万8,000円のパートタイマーの場合、事業主負担分は約1万2,368円になります。同条件の従業員を10人雇用している場合、月額で約12万円、年額で約148万円の負担増になります。
- 手続き: 社会保険に加入するために、算定基礎届や賞与支給届などの手続きが必要です。
- 人材確保: 社会保険料の事業主負担の増加により、雇用できる従業員数に影響を及ぼす可能性があります。また、従業員側からの社会保険に反対する意向や退職申し出が増加する可能性も考えられます。
ただし、社会保険制度の適用対象となることにはメリットもあります。求人募集時に社会保険加入希望者が増加する可能性や、就業調整問題の解決に寄与する可能性がある点を考慮すべきです。
法改正に備えるべき企業の行動
社会保険制度の適用拡大に備え、企業が取るべき行動は以下の9つです。
- 法令の正確な理解: 制度を正確に理解し、トラブルを回避するために厚生労働省の情報を参照しましょう。自信がない場合は、専門家に相談することも考慮しましょう。
- 適用対象の確認: 自社が適用対象かどうかを確認しましょう。従業員数だけでなく、適用条件も検討しましょう。
- 新たな加入対象者の確認: 適用拡大後、新たな加入対象となる従業員を確認しましょう。
- 人件費の試算と施策構築: 人件費を試算し、経営に影響がある場合は対策を検討しましょう。負担増に備えて予算を見直すことも重要です。
- 書式と規程の整備: 社会保険に関する書類や説明資料を整備しましょう。従業員への説明用資料も準備しましょう。
- 従業員への説明: 加入対象者に対して、社会保険制度の変更点について丁寧に説明しましょう。従業員の不安を軽減するためにコミュニケーションを取りましょう。
- 社会保険加入手続き: 新たな加入対象者に関する社会保険の手続きを適切に行いましょう。必要な書類や期限を守ることが大切です。
- 給与計算と納付: 社会保険料を正確に給与から控除し、納付期限を守りましょう。納期を逃すと遅延料金が発生する可能性があります。
- 各種手続き: 必要な手続きを行い、法改正に対応する準備を整えましょう。制度変更に関する情報を常にチェックし、最新情報を把握することも大切です。
社会保険制度は複雑であり、誤った理解や適切な対応の不足が問題を引き起こす可能性があるため、専門家のサポートやアドバイスを受けることが重要です。企業は適切な対策を講じ、制度変更に柔軟に対応することがビジネスの持続可能性を確保する鍵となります。